Raspberry Pi 用 PoE HAT の比較レビュー

Raspberry Pi 用 PoE HAT の比較レビュー

Feb 24, 2021
レビュー
Raspberry Pi

表

裏

要約 #

  1. Amazon.co.jp で入手できる Raspberry Pi 用 PoE HAT を比較してみた
  2. 買うならオフィシャルボードがベター
  3. ただしコイルから鳴る甲高いノイズが難敵

Raspberry Pi 用 PoE HAT の比較レビュー #

Raspberry Pi をたくさん扱ってくると配線をすっきりさせたい願望が湧いてきて、PoE に手を出してみました。 ただ、Raspberry Pi 用のオフィシャルの PoE HAT が Amazon だと意外と値段が高いです。 そんな中 Amazon になんだか安いのがあるのでオフィシャルボードの代わりになるかどうか気になってみたので実際に買ってみたので比較してみました。

比較対象とそれぞれの外観から得られる仕様は次のとおりです。 なお、上の写真の並び順です。

オフィシャルボードIycorishWaveshare
ファンサイズ25x25 mm30x30 mm30x30 mm
ファンの定格電流0.076 A0.1 A0.15 A
装着時の厚み22.8 mm24.2 mm33.2 mm
その他--ディスプレイ付き

オフィシャル PoE HAT #

PoE 動作 #

Cisco WS-C3560X-24PS と WS-C3560C-8PC-S で確認しましたが全く問題ありませんでした。

ファン制御 #

Raspberry Pi OS や Ubuntu であればファンの制御用のファームウェアに組み込まれているので、自動的に温度に応じてファンが回転します。 おそらく初期設定値は ここ に記載されているとおりです。

また、Raspberry Pi OS の場合、/boot/config.txt に次のようにパラメーターを追記すれば動作温度を変更できます。 なお、単位はミリ摂氏です。

dtparam=poe_fan_temp0=55000
dtparam=poe_fan_temp1=58000
dtparam=poe_fan_temp2=61000
dtparam=poe_fan_temp3=64000

もう少し詳細は こちら の記事を参考にするとよいです。

Ubuntu の場合、/boot/firmware/usercfg.txt に下記のように書き込めばよいです。

dtoverlay=rpi-poe
dtparam=poe_fan_temp0=55000
dtparam=poe_fan_temp1=58000
dtparam=poe_fan_temp2=61000
dtparam=poe_fan_temp3=64000

ファン騒音 #

ファンの騒音は3つの中ではノイズ自体は2番目に大きいです。 ただし問題はファンの騒音ではなく、コイルから甲高いノイズが出ており、それが一番気になります。

Iycorish PoE HAT #

PoE 動作 #

PoE のスイッチによっては動かないことがありそうです。 Cisco WS-C3560X-24PS でなぜか初動だけしたのですが2回目以降動かなくなってしまいました。 WS-C3560C-8PC-S でも試しましたが動きませんでした。

WS-C3560C-8PC-S で PoE のステータスを見てみると、ちゃんと認識はされて電源の供給も行われています。 ただし、認識されている給電クラスが 0 (Unknown) ということなので、これが原因かもしれません。 他の動いている PoE HAT はクラス 3 で駆動しており、クラス 0 とは最大供給電流に違いがあるため、供給量が足りていない可能性があります。

Switch#show power inline
Available:124.0(w)  Used:46.2(w)  Remaining:77.8(w)

Interface Admin  Oper       Power   Device              Class Max
                            (Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Fa0/1     auto   on         15.4    Ieee PD             3     30.0 ← Official PoE HAT
Fa0/2     auto   off        0.0     n/a                 n/a   30.0
Fa0/3     auto   on         15.4    Ieee PD             0     30.0 ← Iycorish PoE HAT
Fa0/4     auto   off        0.0     n/a                 n/a   30.0
Fa0/5     auto   on         15.4    Ieee PD             3     30.0 ← Waveshare PoE HAT
Fa0/6     auto   off        0.0     n/a                 n/a   30.0
Fa0/7     auto   off        0.0     n/a                 n/a   30.0
Fa0/8     auto   off        0.0     n/a                 n/a   30.0

また、この PoE HAT の難点のひとつはこれを装着していると USB ポートからの給電ができなくなり、PoE のみでしか起動できなくなります。

ファン制御 #

一番安いだけあってファンの制御はできず、常時ファンが駆動します。

ファン騒音 #

ファンサイズが 30 mm あり、駆動電流も低いため、3つの中では一番静かです。 上記駆動していてても気にならないレベルです。

Waveshare PoE HAT (B) #

PoE 動作 #

オフィシャルボードと同様に問題ありませんでした。

ファン制御 #

この PoE HAT のファン制御は、メーカーから I2C を使った専用のサンプルプログラムが配布されています。 メーカー Wiki に I2C の有効化方法からプログラムのコンパイル方法まで載っています。 なお、このサンプルプログラムにはディスプレイに IP アドレスと温度を表示するコードも含まれています。

ファン騒音 #

サンプルプログラムでは回転数の制御まで含まれていませんのでファン回転時には最大回転数で稼働しているようです。 そのためファンの回転数は高めで、他の2つに比べてこれは明らかにファンが回っている音がわかります。

レビュー結果 #

オフィシャルボードの代替になりうる PoE HAT があるかレビューしてきましたが、正直なところ「なかった」といわざる得ないです。

Iycorish PoE HAT は PoE としての動きが怪しく、少なくとも私の環境では動かないのでそもそも使えないです。

Waveshare PoE HAT (B) は悪くないのですが、私の利用環境ではファンがうるさいのと装着時の高さがネックになりました。 ファンの騒音はプログラムをいじればなんとかなる可能性があるものの、それなりに Raspberry Pi 本体の数を扱うと本体の高さはあまり高くなってほしくないので、その点がどうしようもないです。 ディスプレイがあるのはなんとなくテンションが上がって使いたくなったのですが、それが理由で結局使っていません。

というわけでオフィシャル PoE HAT を買うことにしました。 コイルからなる甲高いノイズが気になるので吸音スポンジを貼ってみましたが多少効果があるようなないような…。

ちなみに Amazon のリンクを貼っていますが、 RS コンポーネンツ で買えば他の2つより安く買えます。 ただ、Amazon とは違って、時期によっては在庫がなく、私は納品まで1ヶ月ほど待ちました。 それだけ、ご注意ください。

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